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Phase transition 4

 

男が目を覚まし、再び遊戯が呼び出されたのは三日を過ぎた頃だった。
「……」
「……えーーーと」
じい、と見つめてくる青い瞳は、当初から考えればまだ落ち着いている。けれどもやはり、目の前の男は遊戯の話以外聞こうともしない。連絡を寄越したモクバの声から疲れは見えていたが、さほど落ち込んでいるようには思えなかった。部屋に入ることを拒否された磯野のほうが、気の毒なほどだ。
「……」
とにかく、説明をしなくては、と言葉を発しない男の前で、ふ、と息をついたときだった。
「……そなたは我が王の血筋のものか?」
「……へ?」
ふ、と上げた視線が細められた挑発的な色彩にぶつかる。
「……そなたは我が王にとてもよく似ている。だが、王ではない。
王が言葉は神の言葉。臣下を抑える為に使役するものではない。王であるなら指先ひとつで民を黙らせるだろう。
……だが」
少しだけ迷うように言葉をとめた男の、視線がわからないくらいに緩む。
「甘い部分も、似ている。王たるには甘すぎるが。
故に違う。我が王はそなたのように甘すぎはしない。
お答え願おう。あなたは、我が王の遠き血縁者であらせられるのか否か」
男の語り口に、内容に、遊戯は深く息をつく。
もしかしたらと思っていた事がどうやら現実として起こっている。目の前の男がいつもと同じであれば、いくらなんでもこんなことは言い出さないだろう。ただでなくとも説明のつかない事が大嫌いな性分だ。自分の口からありえない言葉が出たと知ったら何を喚き始めるかわからない。
だからこそ、違う事がわかる。
そして、説明するにはとても難しい。
ただ、両方とも誤魔化しは効かないし、嘘もつけない。つきたくない。
だから。
「……血縁、では、ない、かな」
じいと見つめてくる男の視線を感じながら、言葉をつむぐ。
「あなたの知っている王のことは、ボクもよく知っています。
ボクは彼とずっと一緒にいて、彼はボクのことを守ってくれました。
彼は強くて、すごく、強くて……振り向けば、いつでもそこにいてくれて……優しかったです」
まだ、あの声を、視線を忘れてはいない。忘れることなど出来はしない。
それでも、言葉にするとなると難しい。ただ感じた、思っていた事をなぞっていくしかない。
「彼とボクは血縁者ではないけれども、もっと、ずっと近いもの、だったと思います」
「……血よりも濃きものを、王との間にお持ちであると」
「……はい」
問いかけに、まっすぐ視線を上げる。
言葉で上手く説明はできない。それでも、自分の気持ちに偽りはない。
絶対に否定も、させない。
「……」
僅かな静寂の後、張り詰めたものを解いたのは男の方だった。
「……そうか」
嘘ではないようだ、そう呟く男が一瞬だけ視線を外す。
「……信じて、もらえますか」
「私は神官だ。相手の言葉の真実を見抜けぬはずがないだろう」
少しの間のやり取りでもまだ回復しきれて居ないからか、疲労の色合いが濃い男は軽く頭を押さえる。
「……そなたには、もうひとつ聞きたい事がある」
「……何となく、あなたの疑問はわかります」
だから、遊戯は先手を打つことにした。
「ただ、その前に確認させてください。ファラオに仕える神官、セトさん」

名を呼ばれた男がゆっくりと顔を上げ、遊戯に視線を向けた。




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*相転移四回目。漸くひとつめの「目指すところ」を書くことが出来ました……のろけさせた!のろけさせたよ!!がんばった!!
どうあっても闇表が私の中では揺るがないのです。

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