Planet Of Dragon+

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始まりと終わりの

 

「……あ」
かたん、と引いた小さな木の箱の中身。
そこにあった文字に、ボクは思わず声を漏らす。視線の先にある紙片には『中吉』の文字。
「……」
あの時のそれと、全く同じもの。
……そう、君が冥界に還る年、一緒に引いたおみくじ。
そういえば君は、これが何を意味するかわかってなくて目を丸くしていたっけ。
*******
「……これは、どういう意味だ?」
『なんか微妙だね。君のことだから大吉とか当然のように引き当てるんだろうなと思ってたんだけど』
少し残念そうに呟くと、君が眉を下げる。
「……すまない。相棒」
『やだなあ。そんなに気にしないでよ。結果自体は悪くないんだから』
君が本気で落ち込んでいる姿なんて珍しい。海馬くんが居たら怒り出すんじゃないだろうか。なだめながら彼の手にある紙片に目をやる。
『中吉、って、まあ、良くも悪くも無い、って感じかな。大吉ってのは逆によくないって話もあるし、ちょうどいいんじゃないかな』
占いで悪い結果が出ても、君ならそれを自分で塗り替えていくじゃないか。
そう言葉をかけると、君の赤い瞳が少しだけ細められて。
「……そうだな。わけのわからない誰かに、オレの行く先を決められるなんて、面白くは無いからな」
ぽつりと零された言葉は何故か、酷くもろく聞こえて。
*******
「どうしたんだ。相棒」
背後から、実際の音で気持ち低くなった同じ声を聞いて、僕はようやく我に返った。
「あ、うん。おみくじをね」
「……ああ、それか」
ゲームみたいなものだろう、と紙片を覗き込む君の瞳が一瞬だけ大きく見開かれて、そして。
「あ!」
「もう、これは必要ないだろう」
褐色の指が薄い和紙をすばやく取り上げていって、境内にあるみくじ賭けに結び付けてしまう。
「ちょっと!もう一人のボク!」
まだしっかり読んでなかったのに!とむくれて見せると、君は綺麗なウインクをひとつ投げてよこした。
「待ち人来る……オレはここにいるんだ。もう相棒が待つべき人は居ない。違うか?」

そう言って笑う君に、ボクが敵うはずはない。

悔し紛れにぎゅうと握り締めた手は君のほうがあったかくて、君がびくっとしていたから。
すこしだけ、溜飲が下がった気がした。





※2015年のお正月、某方のお年賀に書いたアテ表です。
もうそろそろ、と思って公開。

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