Planet Of Dragon+

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Sample

付き従うもの(仮)

 

がうん、と。
衝撃がその場を揺らす。同時に展開した防御壁はふたつ。
ひとつは生身の人間二人を覆い護るもの。そしてもうひとつは既に満身創痍の精霊の前面に展開し破壊を防ぐもの。
かろうじてそれら二つは役目を果たしたものの、精霊の障壁は崩れ去り、少なくは無いダメージを与えたようだ。
「……何の、為に」
ぐ、と拳を握る男が呟く。その見上げた先に、風が集まりはじめる。王家の谷に力が集積させられていた。それも強制的に。
『ッチ。精霊が吸い込まれていってやがる』
障壁を張る黒い精霊が二色の瞳を眇める。その前に立つ青年の、カードを媒介にして召還した銀色の精霊のダメージも大きい。そして、盾になるトラップももう無い。手詰まりの状態だ。
「……ッソ!お前ら、一体何を目的に……!」
すると崖の上から幾つもの影が立ち上がる。ぶわりと広がるのは邪悪な意思。呪いでも亡霊でもない、ヒトの中に巣食う闇。
「この地のどこかにある宝をいただく!邪魔をするなら容赦はしない!」

その声に、彼の中でどくりと鼓動が大きく跳ねる。
まさか。まさか。
宝、って、まさか。

「お前ら!判ってるのか!それは犯罪だ!いいや、その前にここは古の王が安らぐべき場所だ!
土足で踏み荒らすようなことは許されない!」
青年が叫ぶその声さえも遠い。
しかし、次に響いた音が彼に全ての動きを取り戻させる。

「七つの宝は砂の中にあると聞いた!それを手にしたものにとてつもない力を与えるとも!」

ななつの、宝。
瞬間、よぎったのは、金色に輝くあの、四角錘。


『……な……っ』
ごうと風が巻く。すぐ近くにとてつもない力が生まれた。いきなり現れた圧迫感、風ではない力の塊。それに気圧され、精霊が驚きの声を上げる。
『十代!』
まさか敵の罠かと、一瞬慌てるが、違う。
そこにいるのは一人の人間。ともすれば頼りなく見える細身の背中が、なぜかとてつもなく大きい。いや、大きすぎる。
『決闘、王……』
僅かに怯んだ精霊はその名を口にしたときはっとする。
彼の、その背後。その周りに集い姿を現したいくつかの力。そのものたちが示す、彼の感情に気付いて。

「……ッ」
十代は突如として現れた精霊にただ驚いていた。
自分は精霊を使える。人には見えない精霊を見ることが出来る。話も出来る。
けれども、この人は。この人が直接、精霊を使役している姿は見た事が無い。
そして、この人の、こんな気配も、知らない。
何処までも優しく、決闘をするときでも凛としていながらも穏やかさを持っていたこの人が。
きつく前を、相手を睨んでいる。
周りの空気が帯電しているように、痛い。
「ゆう、ぎ、さん」
ようやくその名を呼ぶと、一瞬だけ下を向いたその人が、「十代くん」と呟いた。
次いで向けられた表情はやはり穏やかで。けれど、瞳の色が違う。
「なるべく、気はつけるけど。巻き込まれないように、してね。ユベル、悪いけど、十代くんを護って」
そっと落とされた声は低く。地を這う破壊竜の唸り声に呑み込まれてしまう。
満ちる二つの黒い魔力。崖を飛び上がっていくふにゃふにゃとした影。音も無く満ちる力。真逆の、機械的な轟音。それら全てが圧倒的で。
頷くことしかできない十代は、半ば無理やりユベルに掻っ攫われる。

「この場所を!彼の安寧を!
荒らすことはボクが赦さない!!」

離れた空中。その場から聞いたその人の叫び声は怒りに満ちていた。



Fin
注記:ただの部分です続かないです多分。ものすごく「ブチ切れている遊戯さん」が書きたかったのです。続くとしたら…闇表だろうとは思いますが、王様不在かもしれません……

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