Planet Of Dragon+

http://planet-d.jp

Sample

まもるひと 1

 

ちり、と。
意識の外側で感じていた、針先ほどの感覚。
だが、それはいつしか消えない違和感となっている。

「……っ」
そして、得てして嫌な予感とは当たるもの。
寝転がっていた宿のベッドから腹に力を入れて起き上がるのと、来訪者がドアを蹴破るのはほぼ、同時だった。

まもるひと

「何かが、おかしいです」
真っ赤なジャケットに同じ色のデイパックを持った彼の目は、真剣そのものだった。精霊と融合し、命をひとつにしていることで見える以上の世界を『知って』いる彼に誤魔化しは聞かないのだろう。
「……キミがそういうんなら、間違いないだろうね」
だから、ため息をつきつつ応えた。腰のホルダーから伝わる彼らの『ざわめき』は、大分前から感じている。はじめは違和感にしか過ぎなかったそれは、いまや叫びといってもいい。
「……何かが変だ。それは僕も感じてるよ。でも確証がない。
ただ……三日前から連絡が取れないんだ」
かの地を今、管理する彼女に教えられている緊急回線。一方通行の通信機はどうしても手放せないものになっている。こちらから連絡することなど年に一度くらいなものなのに、ほぼ関わりのない一般市民からの連絡でも、彼女は必ず応えてくれていた。その連絡が勝手な願いだとしても、『あなたは我々の恩人です』と、快く。
なのに。ここ三日間全く応答がない。
「連絡がつかない、なんてことは、まずありえない。
海馬くんにも連絡がつかないか頼んでるんだけど、あちらもどうにもならないみたいなんだ」
「……つながら、ない」
呆然とする彼の様子に小さくため息をつく。
これは、僕のやるべきことだ。僕が勝手に決めて、勝手にやっていること。
だから、この子を巻き込むべきじゃない。
「何かがあるとしても、これは僕の」
「オレも、行きます」
しかし、告げようとした言葉は強い意志で遮られる。まっすぐこちらに向けられた瞳。僅かに色彩の違うそれは、いつもの人懐っこいそれとは別のもの。
「遊戯さんが決めてるってことは、わかってます。
でも、多分、事はこっちだけの問題じゃない。
精霊たちが騒いでるんです。いや、騒いでるって言うより、叫んでる。助けを求めているのもいる。オレにはそれが判るから。判ってしまうから。見過ごすことは、できない」

だから、ついていく、と。
そこまで言われて止める事が出来るだろうか。
『諦めろ。こうなったら十代は意地でもついていくぞ。今回はボクも反対しないしね』
彼の背後にいる精霊までもが、やたら威圧感を放ちながら言うようでは。
何があるにせよ、巻き込みたくはなかったんだけれど。
「判った。
でも今日はもう遅い。一日時間をとろう。
何があるかわからないんだから、準備はしっかりしないと」

どうにか挙げた提案を呑んでくれて、一日準備にあてたんだけれど。
……読みが甘かったみたいだ。




>>>2